適切なホース補強材の選定方法
ホースの補強材に関する基礎知識:アプリケーションに合わせて選定する方法
Doug Nordstrom、シニア製品マネジャー、ホース担当、スウェージロック
ホース を選定する際は、流体の圧力、流体や周囲環境の温度、流量といったさまざまな要因を熟考する必要があります。ホースが特定のシステム要件を満たすことができるかは、アプリケーション条件に適した定格のホース部品を最適な組み合わせで選定できるかにかかっていると言っても過言ではありません。
検討が必要な産業用ホースの部品としては、ホース補強材が挙げられます。ホースのコアだけでは、非常に低い圧力にしか対応できません。補強材を組み込むことで、コア・チューブに強度が加わるため、ホースがアプリケーションの要求に耐えられるようになるのです。
ホースの寿命に影響を与える要因はさまざまですが、頑丈な補強材を持つホースを選定するのが重要なポイントといえます。なお、入手可能な補強材がすべて同じであるとは限りません。今回は、ホースのサプライヤーと取引する上で考慮が必要な補強材の特性をいくつか取り上げ、アプリケーションに適したホースを選定する方法を紹介します:
補強材のタイプ: ホース補強材には、特定の材料(一般的には繊維、ステンレス鋼、プラスチックなど)のワイヤーが使用されています。そして業界全体で一般的に採用されている補強材のタイプが、コイルとブレードです。
コイル状の補強材 は一般的に製造するのが容易なものの、ブレードの強度が不足するケースが少なくありません。ホースに圧力が加わると、 コイル状の補強材が伸びてしまい、ホースのコアとカバーの両方が破損してしまうこともあります。こうなると不具合が生じるのは当然です。コイル状の補強材は、短期的には費用対効果が高いように思えますが、特に圧力が高い場合には寿命が短くなることも珍しくありません。スウェージロックでは、このような理由から、コイル状の補強材を使用したホースは製造していません。
ブレード補強材は対照的に、補強ワイヤーを頑丈かつ弾力性のある形状に編んでいます。コイル状の補強材とは異なり、ホースに圧力が加わってもブレードがほどけることがありません。よって、ホースが加圧に耐え、耐久性が高まることになります。
ホースのサプライヤーに補強材のタイプについて問い合わせて、頑丈なブレード補強材を入手することで、ホース交換の頻度が減り、時間、労力、コストを節約することができます。どのような流体システムにおいても、ホースは使用するうちに摩耗していくため、定期的なメンテナンスと適宜交換することが必要になります。いわば車のタイヤと同じです。購入した車のタイヤを永遠に使い続けられると思う人はいないでしょう。高品質の製品を選定すれば、それだけ長く使い続けることができます。流体システムでは、高品質のホースを使用することで、メンテナンスとオペレーションの観点から大きなメリットが得られることになります。
補強材の材料: 次に、適切な補強材の材料を考慮しましょう。前述したように、ホース補強材の材料には、繊維、ステンレス鋼、プラスチックなどが使用されています。材料によって、ホースの最終用途のパフォーマンス特性が変わることになります。
アプリケーションのニーズによって、補強材の材料、ならびにホースのコア、カバー、エンド・コネクションの材料が決まることも少なくありません。例えば、ステンレス鋼製のブレード補強材とコアの組み合わせで、圧力や温度に対する耐性が高まります。しかし、ステンレス鋼製のブレード・ホースは、加圧に一貫性がないアプリケーション(油圧装置のオペレーションなど)では、柔軟性や動的パフォーマンスが不足する場合があります。
適切なホース補強材を選定するには、導電性についても考慮する必要があります。導電性を考慮しなかった場合、アプリケーションによっては重大な安全上またはパフォーマンス上のリスクが生じるおそれがあります。金属製のブレード補強材を持つホースには導電性があり、帯電することはありません。両端を電気的に絶縁するには、非導電性のホースを使用してください。その場合、非金属の補強材およびコアを選定すると良いでしょう。
なお、ブレードの材料によって価格が異なります。繊維製ブレードまたはステンレス鋼製ブレードのいずれも使用可能なアプリケーションの場合、ステンレス鋼製ブレードを選定すると費用は高くなるものの、全体的なホース内径の真円保持力とつぶれへの耐性が高いため、長期にわたって使用することができるというメリットがあります。 ホースのサプライヤーに相談 して、アプリケーションにとって最適な価値を判断することをお勧めします。コスト効率に優れ、一貫して信頼性の高いパフォーマンスが得られるでしょう。
ブレードの設計:ブレードによってワイヤーの太さやピッチ角度が異なるため、柔軟性、強度(使用圧力範囲)、温度性能といったさまざまな要因が変わってきます。また、最高のパフォーマンスと価値を実現するべく、ブレードでコア材料を補完する必要があります。
例えば、波形の金属コアを使用すれば、それだけでホース内径の真円保持力が高まります。ブレード補強材はフラットなものを選ぶと、コアが長くなっても耐性が高まります。また、ブレード・ワイヤーが交差する角度によって、アプリケーションのニーズに応じたパフォーマンス特性を得ることができます。
その他に、ブレード・ワイヤー自体の属性がホースのパフォーマンスに影響を与えることもあります。ブレード補強材の中には、ワイヤーは太いものの、使用本数が少ないものがあります。このタイプのブレードは、製造するのは容易ですが、それを使用したホースは柔軟性に欠けることが少なくありません。細いワイヤーを数多く使用したブレード補強材であれば、強度や耐圧性を損なうことなく、望ましいレベルの柔軟性を得ることができます。
ホースがすべて同じように製造されているわけではない:重要な産業用流体システム・アプリケーションで使用されているホースが、すべて同じ高い基準で製造されているわけではありません。ブレード補強材の品質が異なることもその理由のひとつに挙げられます。ブレード補強材に関する実用的な知識があり、ブレードがホース全体のパフォーマンスに与える影響について知っていれば、システムにおいて最高のパフォーマンスと信頼性を達成する準備が整っているといえます。また、ホースの設計に協力してくれるホースのサプライヤーとの関係を維持することも有用でしょう。
施設で最適なホースを選定するする方法について興味がございましたら、 Swagelok® スウェージロック基本セミナー の受講をご検討ください。また、スウェージロックの ホース・アドバイス・サービス ・チームにご相談いただければ、ホースの選定、取り付け、検査、メンテナンス手順についてのガイダンスを提供し、ホースの寿命と性能を向上させるべくサポートいたします。ホース・トレーニングやサービスの詳細に関して質問がございましたら、最寄りのスウェージロック指定販売会社までお問い合わせください。
ダグ・ノードストロームは、スウェージロックのホース担当シニア製品マネジャーで、勤続25年以上になります。
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