耐食性のある材料
316ステンレス鋼
ステンレス鋼
ステンレス鋼の耐食性と延性を高めるには、クロムとニッケルが欠かせません。 炭素鋼に10%以上のクロムを加えるとステンレス鋼になり、目には見えませんが密着性がある高クロムの酸化層が形成されます。 この酸化層は、合金に含まれるクロムが大気中の酸素に反応することで形成されます。 この層がステンレスの特性です。 ニッケルを添加することで、延性が向上するだけでなく、成形や溶接も容易になります。
バー・ストックはそれぞれ成分が異なります。Swagelok®チューブ継手および計装用バルブの材料に採用している316/316Lステンレス鋼は、バー・ストックおよび鍛造向けのASTM規格の最小要件より多くの量のニッケルおよびクロムを含有しています。
注意:ステンレス鋼には全面腐食は起きませんが、局部腐食の影響を受ける可能性があります。
この材料で抑制可能な腐食のタイプ:
参考情報
塩化物濃度、温度、引張応力が高いと応力腐食割れ(SCC)のリスクが上昇します。 応力腐食割れのリスクがまったくないステンレス鋼は存在しません。 スウェージロックでは、加圧したSwagelok®チューブ継手に 応力腐食割れ試験 を実施し、非常に良好な結果を得ています。
6-Moly合金
ステンレス鋼
6-Moly(6Mo)合金は、スーパーオーステナイト系ステンレス鋼で、モリブデンを6%以上含有しており、孔食指数(PREN)は40以上です。 合金6HN(UNS N08367)は、合金254(UNS S31254)に比べて、質量で6%以上のニッケル(Ni)を含有しています。 ニッケルの含有量を増やしたことで合金6HNの安定性が増し、好ましくない金属間層が形成されにくくなっています。 合金6HNは、塩化物を含有する流体に対しても、合金254に比べて高い耐食性を持っていることが分かっています。
- 塩化物による孔食とすき間腐食への耐性に優れる
- 塩化物応力腐食割れ(CSCC)への耐性に優れる
- 300シリーズ・オーステナイト系ステンレス鋼に比べて材料の耐力が50%高い
- 耐衝撃性、加工性、溶接性に優れる
- サワー・ガス(硫化水素)用途に適する(NACE MR0175 / ISO 15156)
- 6-Moly製のスウェージロック製品は、6HN(UNS N08367)製のバー・ストックおよび鍛造を使用しており、NORSOKのサプライ・チェーン認定規格M-650の要件を満たしています
この材料で抑制可能な腐食のタイプ:
合金2507スーパー・デュープレックス・ステンレス鋼
ステンレス鋼
2相ステンレス鋼は、オーステナイト粒子とフェライト粒子からなる2相のミクロ組織を持っています。 この構造により、強度、延性、耐食性など、材料の理想的な特性を組み合わせることが可能になります。
合金2507スーパー・デュープレックス・フェライト系-オーステナイト系ステンレス鋼は、腐食性が非常に高い環境に適しています。 ニッケル、モリブデン、クロム、窒素、マンガンを含有することで、全面腐食、孔食、すき間腐食、応力腐食割れ(SCC)に対する極めて高い耐性を発揮し、同時に溶接性を維持しています。
- 耐力および引張強さに優れており、使用圧力範囲が向上
- 同じ外径および使用圧力範囲の316/316Lステンレス鋼チューブと比べて肉厚が薄いため、より多くの流量が得られる
- 溶接性に優れる
- 最高250°Cの用途に対応
- 316ステンレス鋼に比べて熱伝導率が高く、熱膨張係数が低い
- サワー・ガス(硫化水素)用途に適する(NACE MR0175 / ISO 15156)
- 合金2507製のスウェージロック製品は、NORSOKのサプライ・チェーン認定規格M-650の要件を満たしたバー・ストックおよび鍛造から製造
この材料で抑制可能な腐食のタイプ:
合金825
ニッケル合金
合金825(IIncoloy® 825)は、ニッケル-鉄-クロム-モリブデン合金で、さまざまな流体における全面腐食、孔食、すき間腐食、応力腐食割れ(SCC)の耐性に優れています。
- チタニウムで安定化させているため、粒界腐食への耐性に優れる
- サワー・ガス(硫化水素)用途に適する(NACE MR0175 / ISO 15156)
- 還元性環境下(硫酸やリン酸など)での耐性に優れる
この材料で抑制可能な腐食のタイプ:
全面腐食、局部腐食、応力腐食割れ、サワー・ガス(硫化水素)割れ合金625
ニッケル合金
合金625(Inconel® 625)は、少量のニオブを配合したニッケル-クロム-モリブデン合金です。腐食性が非常に高いさまざまな環境における粒界腐食のリスクを低減します。
- 塩酸および硝酸への耐性に優れる
- 強度と延性が高い
- 高温用途におけるすき間腐食と孔食への耐性に優れる
- サワー・ガス(硫化水素)用途に適する(NACE MR0175 / ISO 15156)
この材料で抑制可能な腐食のタイプ:
全面腐食、 局部腐食、応力腐食割れ、サワー・ガス(硫化水素)割れ
合金C-276
ニッケル合金
合金C-276(ハステロイ® C-276)には、ニッケル、モリブデン、クロムが含まれています。 モリブデンの含有量が多いため孔食とすき間腐食への耐性が極めて高いほか、水分を含んだ塩素ガス、次亜塩素酸塩、二酸化塩素による腐食への耐性に優れた数少ない材料のひとつでもあります。
- 酸性や還元性がある流体への耐性に優れる
- 高温下での延性、強靱性、強度が高い
- すき間腐食、孔食、硫化物応力割れ、粒界腐食への耐性に優れる
- サワー・ガス(硫化水素)用途に適する(NACE MR0175 / ISO 15156)
注意:合金C-276は、高温かつ高濃度の硝酸など、酸化性が極めて高い環境には推奨しません。
この材料で抑制可能な腐食のタイプ:
全面腐食、局部腐食、応力腐食割れ、サワー・ガス(硫化水素)割れ
合金400
ニッケル合金
合金400(Monel® 400)はニッケル-銅合金で、フッ化水素酸に対する極めて高い耐性を持っています。また、大半の淡水や工業用水における応力腐食割れおよび孔食への耐性にも優れています。
- 幅広い温度と流体における強度と耐食性に優れる
- 氷点下温度でも機械的特性を維持
注意:海水が滞留している場所で、合金400のすき間腐食と孔食が誘発される事例が確認されています。
この材料で抑制可能な腐食のタイプ:
全面腐食、局部腐食、応力腐食割れ、サワー・ガス(硫化水素)割れ
チタニウム合金
その他の合金
チタニウム合金は、安定した酸化膜が密着して腐食から保護しています。 この酸化膜は、金属の表面が空気や湿気に触れるとすぐに形成されます。 酸素源も水もない状況下では、一旦保護膜が損傷すると再生しないおそれがあるため、使用しないでください。
チタニウムは、以下のような環境下において優れた耐食性を持っているため、さまざまなアプリケーションで使用されています:
- 塩化物を含む溶液や、湿気を含んだ塩素ガス
- 亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過塩素酸塩、二酸化塩素の水溶液
- 天然または塩素処理された海水で、比較的温度が高いもの
チタニウムおよびその合金の特徴:
- 微生物腐食(MIC)に対する極めて高い耐食性
- 幅広い濃度や温度の酸化性酸に対して高い耐食性を持っています。 このカテゴリーにおける一般的な酸には、硝酸、クロム酸、過塩素酸、次亜塩素酸(水分を含む塩素ガス)が含まれます。
チタニウムおよびその合金のアプリケーションにおける注意事項は、以下の通りです:
- 一般的な腐食レートで予測できない条件下にて塩化物水溶液が存在する環境では、純粋のチタニウムが腐食する場合があります
- 乾燥塩素はチタニウムを短期間で腐食させるほか、発火を引き起こす場合もあります
- チタニウムは、フッ素ガス、純酸素、水素には適していません
異材質の組み合わせ
海洋用途において、316/316Lステンレス鋼製Swagelok®チューブ継手は問題なく機能しますが、316/316Lステンレス鋼チューブはチューブ・クランプ内ですき間腐食が生じる場合があります。このとき、316/316Lステンレス鋼製継手に、耐食性が高い合金製のチューブを組み合わせることで、コストを抑えることができます。スウェージロックでは、316/316Lステンレス鋼製Swagelok®チューブ継手と、合金254、合金904L、合金825、Tungum®(銅合金UNS C69100)のチューブとの組み合わせを確認しています。
316/316Lステンレス鋼に含まれるクロムやニッケルの量を増やすことで、Swagelok®チューブ継手の局部腐食に対する耐性を高めています。Swagelok®チューブ継手は、スウェージロック独自のhinging-colleting™(特許)機能付きバック・フェルールによってチューブを強固にグリップし、軸方向の動きがチューブに対する中心方向へのスウェージング動作に変換されるだけでなく、少ない締め付けトルク量で取り付けることができます。また、スウェージロック独自のSAT12低温浸炭工程(特許)でバック・フェルールの表面を硬化させることで、上記の合金チューブでも非常に優れたグリップ力を発揮します。
異材質を組み合わせるとコストを抑えつつ耐食性を高めることができ、海洋環境においては以下のような利点が得られます:
- スウェージロックが採用している標準の316ステンレス鋼は、ニッケルとクロムの含有量がASTM A479の最小要件を上回っており、高いPREN値および局部腐食に対する高い耐性を実現
- 特殊合金チューブは孔食やすき間腐食に対する耐食性に優れる
- ガルバニック腐食のリスクが低い(ガルバニック表に記載の316、254、904L、825のポジション、または316/316Lステンレス鋼製継手とTungumチューブを長年使用した実績に基づく)
他の異材質の組み合わせと同様、異なる合金から製造したチューブと継手を組み合わせた場合の最高使用圧力は、最高使用圧力が低い方の材料によって決まります。 最高使用圧力につきましては、『チューブ技術資料-異材質の組み合わせ』(MS-06-117)をご参照ください。
孔食指数(PREN:Pitting Resistance Equivalence Number)は、孔食(局部腐食)への耐性を表す指数です。 数値が高いほど孔食への耐性が優れていることを示します。
詳細につきましては、補足資料のページをご参照ください。